食肉のうんちく≫ ドライエイジングを利用して肉を美味しくする−食肉の熟成
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●ドライエイジングを利用して肉を美味しくする−食肉の熟成

多くの食肉は熟成(エイジング)を経ることによって軟らかくなり、風味豊になってきます。

死後硬直時の食肉は、筋肉が硬く引っ張り合っている状態です。熟成すると肉自体の持つ酵素の働きによって、筋肉が柔かくなると同時にタンパク質が分解されて旨み成分のアミノ酸が増します。ですから、熟成の程度によっ て肉の旨みが左右されると言っても良いと思います。

上手に熟成をコントロールすることができれば、アッと驚くほどこれが同じ肉か?と言うほどにお肉を風味よく、美味しく食べることができます。これが「ドライエイジング」という肉を熟成する方法です。

■死後硬直の時間と鮮度維持

動物は死後、筋肉の硬直を起こします。その時間は種類・年齢・外気の温度など様々な要因によってそれぞれ違います。一般的には鶏(2時間)・豚(12時間)・牛(24時間)といったところでしょうか。

死後から死後硬直の時間は食肉の鮮度維持期間と関係してきます。死後から硬直が解けるまでの時間が長ければ長いほど、その食肉の鮮度維持期間も長いということになります。

魚の鮮度に置き換えて考えるとよく理解できると思います。魚 を刺身として食べようとしたとき、一番に鮮度を考えないでしょうか?刺身をプリプリして美味しいと感じる、鮮度が良いと感じるときは、死後硬直時なので す。皆さんもご存知のように、刺身として食べられる期間は短いものです。つまり、魚は死後硬直時間が短く、鮮度維持期間も短かいという事になります。

※魚も肉も死後硬直を早く迎えてしまってはその後の鮮度維持に大きく関係してきます。

■熟成期間と旨みをコントロールするものだけが美味しいステーキを食べられる!

熟成期間は肉の種類により様々です。ラムのように鮮度が重要で、熟成期間なしにすぐに食べた方が良い肉もあります。0℃〜1℃の冷蔵庫で、鶏肉はほぼ12時間で熟成が終わり、その後24時間程度が一番美味しく食べられるようです。

※これとは対称に牛肉は、20日から1ヶ月程度熟成をかけると軟らかく味の良いものになります。

豚肉の場合は少し複雑で、一般的には10日前後の熟成が良いとされてい ますが、豚肉の品質、熟成の環境によって大きな違いが出るようです。非常に良い品質の豚肉をクリーンな環境で熟成させ観察したところ、3週間程度のものが 一番美味しいというテスト結果もあるのです。市場に流通している食肉には様々な熟成度のものがあります。

例えばスーパーやデパートでは、肉の色を鮮やかに出さなくてはならない為、熟成の浅い肉を販売しなければなりません。なぜなら十分に熟成されたお肉を買っていった場合、翌日には家庭の冷蔵庫で肉の色が黒くなってしまう可能性があるからです。

反面、外食店では調理をして出す関係上、肉の色はあまり重要ではなく適度な熟成を待つことが出来るわけです。ご家庭で焼いたステーキよりも、外食店のステーキの方が美味しいと感じるのは、熟成度の違いもあるかも知れませんね。

※鶏なども飼育期間の長い鶏(地鶏など)は、熟成期間が長いものもあります。適度に熟成させることによって、なんとも言えない風味とコク、柔らかさが出てきます。

■アメリカで出会った究極の熟成ステーキ! ドライエイジングによって美味しく熟成させる!

アメリカの有名なレストランの熟成法をご紹介したいと思います。

熟成のことをエージングと言いますが、このレストランでは冷蔵庫の中で、骨付きの牛肉をむき出しのままドライエイジングしていました。また冷蔵庫の中では、扇風機をまわしているのです。肉の表面はビーフジャーキーの様に乾き、黒くなり、たまに白っぽいカビが生えてしまいますが、ドライエイジングの結果十分に美味しくなっている証拠とのことです。1ヶ月以上!もの間ドライエイジングをかけられた牛肉のブロックは周りの乾いた黒い肉をそぎ落として完成です。

すると中からしっとりとした極上に熟成したくすんだ赤色の肉が現れます!

それを、ステーキにします!もう、最高に旨いものでした。ドライエイジングによりカビが生えるほどの時間をかけて最高の瞬間を待っているのです。肉に対する文化の違いを見せ付けられた思いがしました。肉牛の違い(和牛・ホルスタイン・アンガス牛など)の美味しさを求めるのも一つの食べ方ですが、その肉の一番美味しい状態をドライエイジングによってじっくりと作り上げていって味わう!のも最高の食べ方だと思います。

■ドライエイジング・ちょっとアドバイス、これが美味しくなる秘訣です!

ドライエイジングの薦め

真空パックでのエージングよりも、ドライエイジングの方が確かに美味しいのですが、歩留まりの関係上コストアップにつながり、一般的ではありません。そこでアドバイス。

肉を全体的に布などでくるんで、乾きにくくしながらエイジング(熟成)していきます。使用するタオルや布はきれいなもので、できれば滅菌をし定期的に取り替えます。簡易的なエイジングですが、肉の熟成はグンと違ってくるはずです。

■ドライエイジング熟成を早めるための裏技!

一般に利用できるドライエイジングの裏技

前述したように、熟成は酵素の働きによって起こり、一定の時間を必要とします。そして酵素の働きは温度が高いと早くなり、温度が低いと遅くなります。ですから熟成を早めるためには温度を高くすれば良いということになりますが、熟成を急ぐ場合は食肉用冷蔵庫よりも温度の高い野菜庫などを利用するのも良いかと思います。この時、温度が高い分、雑菌の繁殖も考慮しなければいけません。ドライエイジングをする場合、肉の表面と冷蔵庫内の殺菌が必要です。庫内に殺菌灯などを設置することも有効かもしれませんが、この熟成には十分な下調べと試行錯誤が必要かも知れません。

専用の冷蔵庫を使用してドライエイジングを実行する

ドライエイジング熟成を手軽にできるのが、専用の冷蔵庫を使う方法です。この冷蔵庫は冷凍品の解凍ができて熟成できるものです。食材の鮮度を保ったまま解凍とか、熟成をします。マイナス2℃という温度帯で解凍、熟成してくれますから食材にとっては理想的な温度帯です。 弊社は主に、和牛の熟成などに使用して効果を上げています。

本来、熟成を進ませるということは、酸化をして腐敗に近づくということなのですが、この冷蔵庫を使うと、腐敗に近づくスピードが遅くなり、その分、熟成が進行できます。雑菌の繁殖を抑えながら通常より速いスピードで熟成が進行するんです。

 

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