■素材の鮮度をそのまま維持するための、凍結のポイント!
緩慢凍結はしない。最大氷結晶生成帯※を早く通過させることがポイントです。
肉の中の水分は凍結すると結晶化しますが、緩慢凍結の場合は氷の結晶が大きくなってしまうのです。小さくするには凍結を早くすることが必要になってきます。
※緩慢凍結:ゆっくりと凍結すること
※最大氷結晶生成帯とは−0度C〜−7度Cぐらいまでの氷が結晶化する温度帯です。
緩慢凍結の結果、氷の結晶が大きいと肉の細胞繊維を破壊してしまいます。解凍時のドリップもより多くなってしまいます。
その結果、旨み成分も半減されてパサパサした食感になるのです。これを防ぐには、氷の結晶ができる温度帯(最大氷結晶生成帯)を早く通過させることが必要となってきます。ほとんどの食肉の場合、その温度帯は0度からマイナス7度ぐらいですが、この温度帯さえ早く通過させることが出来れば、氷の結晶は小さくて済む訳です。
より良い状態で凍結するための方法を、ご家庭で出来る事と、プロの調理場にわけてご紹介したいと思います。(もちろんご家庭でもプロの調理場の環境があれば実現できます)
■ご家庭の場合 アルミのトレーを使います!
◇肉の包装形態 なるべく平らに表面積を大きく
トレーでのパックの状態での凍結はさけたいものです。緩慢凍結になってしまいます。
パックの中に空気が入っていることにより温度伝達が悪くなりますし、トレーの材質により温度が遮断されてしまいます。
できるだけ空気が入らない状態で肉だけをパックしましょう。冷凍保存用のジップ式袋を利用すると便利です。
またなるべく凍りやすいように、薄く平らにのばすのがコツです。
◇冷凍室に入れる前に 十分に冷却をする
パーシャル室などを利用して、肉の温度をマイナス1度に近づけておくことが大切です。肉の温度を凍結温度に近づけておくことによって、凍結までの時間が短縮されます。
◇冷凍庫の工夫 アルミのトレーを使う
次にアルミニウムのトレーを十分に冷凍庫に入れて冷やしておきます。
アルミニウムは、ステンレスの約14倍の熱伝導率に優れていますので肉の温度を急速に奪ってくれます。先ほどの薄くのばした肉をアルミのトレーに置きます。
◇冷凍庫の工夫 霜取りをする
また当然のことですが、霜取りをしている時に入れるのは好ましくありません。
強制的に霜取りをして、よく冷えるようになってから、冷凍庫の温度を最低にセットして冷凍することをおすすめします。
※アルミニウムは、ステンレスの約14倍の熱伝導率に優れていますので肉の温度を急速に奪います。その後も冷気を効率よく肉に伝えることができるのです。
■プロの調理場の場合 アルコール凍結(液体凍結)がおすすめです!
ここでは、確実に差が出て、しかも割と手軽にできる本格的な急速凍結法をご紹介します。急速に凍結するには、通常の急速凍結と液体凍結を比べた場合、液体凍結の方が優れています。
ただし、完全な方法ではないので(アルコールを攪拌できない為)大きなブロックよりもステーキなどの少量のパックが効果的だと思います。また、通常のアルコールは取扱が難しいので凍結専用のアルコールなどをご使用ください。
またアルコールでの凍結の場合、まわりのふくろを完全に殺菌できるために衛生面でも非常に有効です。
◇肉を真空パックする
凍結後の冷凍焼けをある程度防ぐことが出来ます。また当然ですが、アルコールが直接肉に触れるのを防ぎます。
◇液体凍結する
気体凍結(一般の冷凍庫)よりも、液体凍結の方が熱の伝導率が遥かに優れています。液体凍結機の導入がベストですが、コスト的に高価なものですので(500万〜)ここでは手軽な方法をご紹介します。
1・冷凍庫の中にアルコールを入れた容器を用意する。アルコールの温度は−20度C以下アルコールを入れる容器はアルミの寸胴などが最適です。熱効率もいいですから。
2・真空パックした肉をアルコールの中に入れる。
3・凍結を確認する。(ステーキ程の大きさであれば20分ぐらいで完全に凍結)
4・凍結後、冷凍庫内にざるを入れた容器を用意しておいて、そちらに移しアルコールをきる。
5・アルコールが切れたところで通常通り冷凍庫で保存。長期保存に耐えます。(残ったアルコールは繰返し使用できます。)
固体(肉)量に対して液体(アルコール)量の比率が大きい程、温度上昇が少なく効率的に凍結することができます。連続して凍結する場合は温度計で確認しながら作業をして下さい。
以上の作業で、肉をより優れた状態で凍結することができます。
肉はもちろんのこと魚のフィレ等にも応用できますし、相場が上がる前に大量にストックするには、いい方法です。
様々な食材で試してはいかがでしょうか。
冷凍解凍の専用のシステムを組む!
冷凍のシステムとしては冷凍→解凍の一連の流れが出てきますから専用のシステムを組むことをおすすめします。このシステムにより食材の熟成までをコントロールできますので、最終的に熟成システムを利用したメニューの開発などにも大変有効だと思います。
→冷凍解凍ノウハウ |
■液体凍結の効用 液体の熱伝導率はピカイチ!です。
気体と液体を比べた場合、熱伝導率で液体の方が数段勝っています。次のことを連想してください。
人間は裸ででマイナス30度の冷凍庫に数十秒ぐらいは入ってられますが、マイナス30度のアルコールの中には一瞬たりとも入ってられないでしょう。
また、100度のサウナには暑くても入っていられますが、沸騰するお湯の中には入っていられないことは承知の通りです。
食肉の凍結・解凍には、液体の熱伝導率の良さを使って生の状態とほとんど変わらない状態を再現することができます。 |