フランスはイタリアとともに、世界で最もワインの生産量が多い国です。
かつては国中のほぼ全域で、現在では北部および北西部を除いてワインが生産されており、中でもボルドーとブルゴーニュ地方は特に知られていますが、そのタイプは実に変化に富んでいます。
今回は、ブルゴーニュ地方のワイン、特にとても複雑で実際にはあまり理解されていないA.O.C.についてご紹介したいと思います。
A.O.C.とは、Appellation d'Origine Controleeの略称で、日本語では「原産地名規制呼称」(場合によっては「原産地名統制呼称」とも言われます)と訳されています。単純に"格付け"と解釈されていることもあるようですが、これは元々、フランスのワインやチーズなどについて、「地元で昔から続いてきた伝統と製法を重んじる」という考えに基づくもので、I.N.A.O.(Institut
National de l'Appellation d'Origine、全国原産地名規制機構)によって、管理監督されています。I.N.A.O.は国の機関ですが、A.O.C.の実際は地方によって事情が異なりかなり複雑になるので、ここでは特にブルゴーニュについてご説明します。
ワインの場合、A.O.C.を持つワインとは、生産地、ぶどうの品種および栽培方法、ワインの製法などについての一連の規制を満たすものです。また1つのA.O.C.とは、ある共通した特徴(キャラクター)を持つワインに与えられるもので、生産者の違いには関係しません、つまり複数の生産者が同じA.O.C.を持つワイン(例:Pommard
1er Cru)を先産するのはブルゴーニュではごく普通です(例えばボルドーの場合、これがシャトー(=ワインメーカー)に与えられたりする点についてブルゴーニュとは異なります)。
A.O.C.には4つのアペラシオンが存在します(カッコ内の数字はブルゴーニュワイン全生産量中の各アペラシオンの比率、ただし統計によって多少違いあり)。
・A.O.C. Regionale (65%)
・A.O.C. Communale (23%)
・A.O.C. Premier Cru (11%)
・A.O.C. Grand Cru (1%)
瓶詰販売されるワインでA.O.C.を持つものには、エチケットにそれが明記されています(エチケットの表記方法なども細かく規制されています)。
まずA.O.C. regionale は、日本語では「地域名表示ワイン」と呼ばれますが、4つのアペラシオンの中では一番広範囲に渡ります。Bourgogne(ブルゴーニュ)、Bourgogne
Aligote(ブルゴーニュ アリゴテ)などがその例ですが、エチケットには"Appellation
Bourgone Controlee"などと表示されています。4つのアペラシオンの中では
一般に価格も一番低くなっています。
その次がA.O.C. communaleで、これは「町村名表示ワイン」と呼ばれます。Gevrey-Chambertin(ジュヴレ・シャンベルタン)、Nuits-St-Georges(ニュイ・サン・ジョルジュ)など、そのワインの生産される町村名が与えられたものと考えるとわかりやすいですが、実際には生産地域が複数の町村にまたがっている場合などもあり、もう少し複雑です。エチケットには" GEVREY-CHAMBERTIN
Appellation Gevrey-Chambertin Controlee" などと表示されています。
更に、A.O.C. communaleのうちでも特に優れた質を持つワインを生み出すとされるものには、
A.O.C. Premier Cru、「格付け第1級」が与えられます。これはエチケットに"BEAUNE
LES GREVES Appellation Beaune Premier Cru Controlee"といった表示がされていて、単純なA.O.C.
communaleより概して価格も上がります。
そして、A.O.C. Grand Cru、これは「極上銘柄」と呼ばれるもので、かのロマネ・コンティなどがそれにあたります。これは、あるキャラクターのワインを生み出す、ある名前をつけられた畑(クリマもしくはクリュ)から作られるワインに与えられるものです。エチケットには"ROMANEE-CONTI
Appellation Romanee-Conti Grand Cru Controlee"などと表示されています。
最後になりますが、念のために付け加えておくと、一般に、上記の説明の順に従ってワインの質もよくなるものと考えられますが(実際、アペラシオンとしての条件もより厳しく細かいものになっています)、
A.O.C.とはワインの素性(出生)を保証するものであって、ワインの味を保証するものではありません。
よってワインを選ぶ際には、これらのアペラシオンは1つの目安になり得ますが、これは絶対的な基準ではありません。例えば町村名表示ワインでも1級ワインの質に匹敵するものはたくさんありますし、逆に1級ワインでも町村名表示ワインより味の劣るものもあります。数多くの試飲や、信頼できる人のアドバイスでお気に入りのワインを探してください。
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