◇死後硬直と解体
ジビエの場合、狩猟後の屠体の状態をどう処理するか?
によって素材の質が大きく違ってきてしまいます。
ましてや、ハントから調理までの行程を考えた場合、様々な分岐点が有ります。その分岐点でどのような選択をするかによってジビエの素材としての価値はどうなるのか?
つねに自問自答し確認していたいものです。
やむを得ず冷凍をかける場合も冷凍のタイミング、 冷凍の方法、解凍の方法など様々な分岐点が有ると思います。
狩猟の際、仕留めた鳥獣肉はまだ生暖かい状態です。
この状態(死後硬直前)での解体は避けねばなりません。できれば内臓を取り除いた状態で、冷蔵庫保存をします。
この時点でほとんどの獣肉は内臓を取ってしまいます。
鳥類においては内臓は取らない方が多いようです。
ハンターによっては狩猟犬のご褒美に内臓をその場で与えてしまうこともありますが、
購入の際には、確認する必要のある点です。
野鳥類などは内臓に価値があるものや、熟成の際に肉全体に内臓の香りをつけることによって、価値が出るものがあるからです。
基本的にハント後の屠体は、段階的にゆっくりと冷却することが大切です。
猟場では内臓を取った状態で、枝肉のまま解体所に搬入します。
その状態で、死後硬直が起きるまで緩やかに冷却をしていきます。
最低でも死後硬直が解けるまで、枝肉の状態で保管をしてその後の解体をおすすめします。
※死後硬直以前に現場などで解体をすることは、良い肉は最初から放棄をしているといわざるをえません。
なぜなら、解体して小さな肉にしてから死後硬直が起きるからです。肉がかたくなるばかりか、旨い肉汁も
出きってしまい、美味しくなくなってしまいます。
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<鹿の解体>
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◇死後硬直と冷凍保存
ハンティングで得た屠体が、どのようにして死後硬直を迎えるか?美味しいジビエを語るためには大いにこだわりたいところです。
理想は、ハンティングしたそのままの状態(屠体によっては内蔵、毛皮を除いた状態)で、冷蔵庫まで運ばれ、死後硬直を迎えることです。
現場でスピーディーに内臓を取り除き、冷却され、運搬後、冷蔵庫に保存されてから死後硬直を迎える事が望ましいわけです。
最近は、現場から携帯電話での連絡により買い手を見つけてしまう。
そういう話を聞きますが、契約をする前に、ハント後の処置にもっとこだわって、ハンターに要望をするべきだと思います。
それがより鮮度の高い素材を仕入れる方法ですから。
さて、現場での捌き方も理想と現実があります。現場でやむを得ず解体をする場合は、出来るだけ骨付きの状態にとどめておくべきです。肉から骨を取れば取ったぶんだけ、死後硬直の縮みが大きくなってしまいます。肉が縮むのを防ぐ、いわば「つっかえ棒」の役目として骨を除かない方が良いのです。
解体された部分的な骨付き肉は、時間が許すなら現場近くの雪の中か、冷たい渓流の中で冷却する事が望ましいと思います。
屠体の内臓を除いただけの状態ならばそのまま渓流の水の中でもいいのですが、部分肉をそのまま水につけてしまうと大切な肉のエキスまで流れてしまいますから、袋などに入れてできるだけ空気を抜いた上で、冷水につけておくことをお勧めします。
いちばん避けなければならないのは、屠体をその場で正肉(骨なし肉)にしてしまうことです。
正肉で死後硬直を迎えることは、避けなければなりません。ジビエとしての価値が半減してしまいます。
ましてや、持ち帰った肉を死後硬直前に冷凍保存することは、タブーに値します。
何日後か何ヶ月後かわかりませんが、解凍した後に死後硬直が訪れて、大切な肉汁を大量に絞り出してしまいます。
その量は実に30lにもなります。10キロの肉が7キロになってしまいます。
したがって肉もすかすかになっていて、とても美味しいジビエなどとは、ほど遠い物になってしまいます。注意が必要です。
狩猟肉の冷凍肉を仕入れた際に、解凍をしてこのような状態になったら、ジビエとしての価値は半減している物だと思ってください。
◇解凍とドリップ
食肉を凍結する際の理想は、急速凍結です。
知り合いの食肉施設があれば、それらの施設を使わせていただくことをお勧めします。
部位ごとに真空パックをして、急速冷凍をするのです。その際には死後硬直後の食肉を使用することは言うまでもないことです。
補足としては、グルメミートWORLDの食肉のうんちくの、冷凍と保存に出ていますのでご参考ください。
また、やむを得ず緩慢凍結を行った場合は、細胞中の氷の結晶が肉眼でもわかるほど大きくなります。
この結晶の細胞破壊により、解凍時に保水率が急激に弱まりドリップが多くなるわけです。
ドリップが多いと言う事は、前出したように、肉をまずいものにしてしまうのです。
緩慢凍結のジビエは価値が半減しますので、確認が必要です。
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